毎年流行するインフルエンザや、風邪対策として必需品と言えば「マスク」!
今回は、「マスク」の効果についてお話しします。
私自身、マスクってなんで効果があるの?と疑問に思って調べました。
参考になる、論文がありましたので、わかりやすく解説していきます。
「マスクって本当に効果あるの?」
「科学的根拠や、エビデンスはあるの?」
こういった疑問にお応え致します。
インフルエンザだけでなく、新型肺炎の流行も記憶に新しいです。
(と言うか、今絶賛流行中!)
新型肺炎予防のために、マスクの需要が急に増えて、薬局やコンビニでマスクが品切れの状態が毎日続いています。
コンビニのクジで偶然マスク当たったけど、完売で引き換えできなかった…(笑)
マスク関連銘柄の株価が急騰するなど市場への影響が増しています。
感染症名 | 時期 | 発生場所 | 概要 | 感染者 | 感染経路 |
新型肺炎 | 2020年1月 | 中国武漢市 | 新型コロナウイルス | 日本、米国、韓国等 感染者数:31,728人超 死者:1,000人超 (2020年2月11日時点) | 飛沫感染が中心 空気感染も可能性有 |
MERS 中東呼吸器症候群 | 2012年9月 | 中東 | コロナウイルス | 中東・欧州を中心に27カ国 感染者数:2,494人 死者:858人 | 飛沫感染が中心 |
SARS 重症急性呼吸器症候群 | 2002年11月 | 中国広東省 | コロナウイルス | アジアを中心に32カ国 感染者数:8,098人 死者:774人 | 飛沫感染が中心 |
論文と聞くと「難しい」と思うかもしれませんが、分かりやすく解説をしていきます!
これを機に、マスクの効果について正しく理解を深めたいですね♪
ご紹介する論文は、千葉大学の瀧澤毅著の「マスク着用にインフルエンザ予防のエビデンスがあるか?」です。
感染予防にマスクは有効か?
厚生労働省の「個人、家庭及び地域における新型インフルエンザ対策ガイドライン 」によると、感染拡大の防止として
発症した人がマスクをすることによって他の人に感染させないという効果は認められており、自分が発症した場合にはマスクを着用することが必要である。
他方、まだ感染していない者がマスクをすることによってウイルスの吸い込みを完全に防ぐという明確な科学的根拠はないため、マスクを着用することのみによる防御を過信せず、お互いに距離をとるなど他の感染防止策も講ずる必要がある。
と記載があります。
薬局などで売られている一般的な「サージカルマスク」は被感染者がマスクをすることにより、他の周囲の人へ飛沫感染を防ぐ為に有効です。
ウイルスや細菌自体は、マスクの穴よりも小さいため、マスクの穴を通り抜けることができます。
しかし、くしゃみ、咳に伴って、出てくるウイルス・細菌は、水分に覆われていて、5マイクロメートル以上の大きとなるため、被感染者がマスクをすることにより、他の周囲の人へ病気を移してしまわない為に有効です。
一方で、感染していない人がマスクをすることで感染を予防する効果については「明確な科学的根拠はない」とされています。
最初は咳やくしゃみの大きい飛沫でも、空気中を漂い広がるうちに小さくなります。
一般的な「サージカルマスク」は穴の径が「5マイクロメートル」なのに対してウイルスの大きさは「0.1マイクロメートル」です。
確かに、マスクの穴を通り抜けるサイズの飛沫は、防ぎきれません。
インフルエンザ感染予防効果のエビデンスの考え方
厚生労働省は「科学的根拠はない」としていますが、科学実験による、マスクがウイルスを通すかどうかの実験の結果だけがエビデンスではないと筆者は言っています。
英米では、エビデンスとはEBM(evidence-based medicine)「根拠(エビデンス)に基づく医療」のことを示しています。
EBMでは、単なる研究結果や実験データだけを頼りにせず、臨床試験や疫学調査の結果を統計的に評価し、統計的な違いが偶然では説明できないほど大きい時は、統計学的に有意とするのです。
机上の実験と結果が異なる時は、実際の臨床データを優先しましょうっていう考えだよ♪
つまり、統計学的にマスクの有無で感染率が著しく異なる場合は、マスク予防の有効性が「エビデンスがある」=「科学的に根拠がある」とすることができます。
では、実際にマスクをした人としていない人のインフルエンザ感染率を統計学的に比較していきましょう。
マスク予防が有効であることを示す臨床に基づくデータ
①SARS感染者の治療に当たった病院スタッフのデータ
SARSとインフルエンザウイルスは種類の違うウイルスですが、大きさが近似しています。
そのため、マスクによる予防の有用性が比較されました。
「SARSコロナウイルスは直径100〜200nmで、インフルエンザウイルスに近似しており、参考になる研究結果と思われる」
表1.職員のマスク着用とSARS感染(論文より引用)
感染した人 | 感染した人(%) | 感染しなかった人 | 感染なかった人(%) | |
マスク着用 | 2人 | 15% | 169 | 70% |
マスク非着用 | 11 | 85% | 72 | 30% |
合計 | 13 | 100% | 241 | 100% |
SARSに感染した患者11人の治療に当たった病院スタッフ254名の統計データです。
マスク着用の有無や、手袋および、ガウンの着用、手洗いについて比較検討しています。
感染した人のうちマスク着用があったのが15%で、感染がなかった人のうちマスク着用していたのが70%でした。
こんなに差が出るの??!
表1の結果は感染者と非感染者のマスク着用率の違いが偶然起きるとすれば、その確率は0.0001しかなく、偶然では説明できないことを示したものである。
しかしながら、このデータでは、254名がマスク以外の条件(手袋・ガウン・手洗い)が異なっている他、単純にマスク着用者と非着用者の感染率を比較する実験ではありません。
②マスクがSARS感染に有効であることを示す複数のデータ
SARS感染とマスクについての研究は過去に5件報告されています。
マスク着用によるSARS感染リスク軽減オッズ比(論文より引用)
研究 | 地域 | 対象被験者 | 感染した人 マスク着用/例数 | 感染しなかった人 マスク着用/例数 | オッズ比 (95%信頼区間) |
Seto2003 | 香港 | 職員 | 2/13 | 169/241 | 0.08 (0.02~0.36) |
Lau2004 | 香港 | 患者・市民 | 93/330 | 388/660 | 0.28 (0.21~0.37) |
Wu2004 | 北京 | 患者・市民 | 27/94 | 43/281 | 0.48 (0.29~0.80) |
Yin2004 | 北京 | 職員 | 68/77 | 178/180 | 0.08 (0.02~0.40) |
Nishimura2004 | ハノイ | 職員・患者親族 | 8/25 | 35/90 | 0.74 (0.29~1.90) |
総合オッズ比 (研究の均等性 の検定のpの値) | 0.32(0.26~0.40) 0.0024 |
マスク着用がSARS感染軽減と強い関連していることは5つの症例対照研究全体を通して言えることになる。
表からわかるように5つの研究はいずれも、感染しなかった人のマスク着用率が非常に高いことがわかります。
エビデンスはそのデータの取得方法によってA~Dレベル分けがあり、こちらのデータのエビデンスは推奨度B(3b)に該当するようです。
ちなみに推奨度Aが、一番推奨度が高いです。
「手洗いの小児肺炎などの感染症予防効果」については、推奨度Aが出ています。
③東京都荒川区の小学校1〜6年生のデータ
試験期間は2007年の2月5日〜3月2日で、このうち保護者の同意を得た254人を対象に行なっています。
マスク着用のグループ(161名)と非着用のグループ(93名)に分けて検証を行なっています。
表2.マスク着用とインフルエンザ発症(論文より引用)
発症 | 非発症 | 合計 | 発症率 | |
着用 | 3名 | 158名 | 161名 | 1.9% |
非着用 | 10名 | 83名 | 93名 | 10.8% |
マスク着用者のインフルエンザ発症率は1.9%で、非着用者の発症率は10.8%となりました。
発症率を比べると、その差は5倍近くになります。
思っていたより差が大きいかも…。
このような発症率の違いが偶然起きる確率は0.0052と小さく、偶然とは考えられない。
とした上で、家庭における衛生習慣や衛生意識に差がある可能性があり、マスクの効果だけの結果と断定できないとしています。
確かに、日頃からマスクつけている人は、手洗いうがいも、しっかりしている可能性がありますよね。
一方、マスクしていない人は、手洗いの頻度が少なかったり、うがいをしていない可能性もあります。
マスクの感染症予防の効果のエビデンスについて結論と考察
いずれの実験からも、マスクを着用した人の方が発症率が低い結果が出ているものの、着用者の生活習慣・衛生意識が統一できなかったり、着用時間が統一できないため、マスクにおいてはエビデンスレベルBが現状のようです。
筆者は、結論で次のように述べていました。
ランダム化比較実験で手洗いの感染症予防効果が統計的に有意でマスク着用が有意でなかったのは、マスク着用郡に割り付けられた被験者のマスクの常時徹底使用が難しかったためと考えられる。
確かに、マスクって結構つけ外ししたりしますよね。
家帰ってきたら外しちゃったり、寝ている間知らないうちに外してしまったりします。
そのあたりを一人一人、統一できないと、レベルの高いエビデンスは得られないようです。
その為、よりエビデンスレベルの高い、他の予防策(手洗い)の方が有効であるとWHOは判断をしています。
個人的には、マスクの効果って私たちが思っている以上にあるんだと思いました。
マスクの効果をそのものを検証する環境が整えにくいというだけで、効果そのものはあるんんじゃないかと…。
少なくとも、人混みに行くときはきちんとマスクつけよう!
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